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さらさく

誰もいない。この場所は。

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誰もいない。この場所は。

後味がよくない&よくわからない系のホラー小説。
誰もいない夢を見て飛び起きた経験があります。
本文は続きから。
なんのへんてつもない日に今日もなると思っていた。


朝、目覚めるとなんの物音もなく、静寂が広がっていた。
いつもならば母が朝食の支度をしている音とか父のパソコンの起動音、
妹の壁に体当たりしている音(つまり妹は酷い寝相をかく)があるはずだ。

私はベッドから降りた。
そして家族を起こそうと寝室へ向かった。

ギィッ
というドアが軋む音がやけに耳をつく。

それもこれもみんながらしくもなく寝坊しているせいだ。

部屋の中に視線を移すと……

そこには誰もいなかった。

あれ?
みんなはどこ??

ハッと我に返り、慌て家中を探す。
きっとドッキリさせようと隠れているだけだから。

そんな思いも打ち砕かれた。
誰も、見つから、ない。

どうして!?

外に飛び出す。
しかしそこも満たすは静寂ばかり。

あぁ、独りなんだ。
そう思うと、目の前が真っ暗になっていった……。
そう、コレはきっと夢。そうじゃなきゃ、ありえないもの。


目の前が正常に戻る。
しかし、景色は変わらぬまま。
うそ、でしょう!?

気が動転した私は駆け出す。
人の気配を見つけるため。

だが、景色が変化しても人の気配は見つけられなかった。
そのうち、自分は走っているけれどもいっさい移動していない感覚に陥った。

時間感覚がなくなり初め、ほぼ半狂乱になった頃。
学校の辺りに人の気配を感じた。

いた。
後ろを向いているけれども。


私がその人影に声をかけ、相手が振り向いた瞬間。
急激に血の気が下がって意識が薄らいでいった。


う……?
ここは……家?
今、私は私の部屋のベッドにいる??
完全に覚醒していない頭でぼんやりと考える。

音、が聞こえる。
いつもの朝だ。
大丈夫、さっきまでのことは夢だったんだ。

「まり〜?ご飯よ〜」
「は〜い、いま行く!」
そして決まりきった朝を過ごし、学校へと向かうためドアを開けた。

ドアを開けても、何の異常も変化も訪れなかった。
ホッと息をつく。
よし。

「いってきま〜す!!」

バタン

ドアが、閉まった。
学校に向かう。

いつも通り、いつも通りの風景。
車は危ないくらいスピードを出して走っているし、小学生が遊びながら集団登校している。

学校に近づけば、部活の朝練をしているので、運動部のかけ声や吹奏楽の音楽が流れていた。
夢とは違って、音に満ちあふれている。

うん、いつまでも夢なんかのことを引きずっているなんてバカらしいや。
教室に入る。
授業が始まる。
おもしろくもないし、難しくもない退屈な授業。
あっという間に一日が終わった。
私は部活に入っているけど、風邪気味だからとかなんとか適当な理由をつけて行かなかった。
以外と、まだ夢のことを引きずっているようだ。
家に帰って安心したい。

家に帰って。
ドアを開ける。
今朝見た悪い夢はすっかり忘れて。

ガチャ

ドアを開ける。

「たっだいま〜〜! 今日の夕飯なあ・・・・・に・・・?」

なぜか、シンっと静まり返った家の中に私の声がむなしく響く。

サッと血の気が引いた。
まさか、ま、さか。
ドクドクとうるさく鳴り響きはじめる胸を押さえ、家の中を探す。

どうして、?
今日は誰も出かけてるとか、遅いとか言ってないのに。

次々と沸いてくる不安。
そして予想していたとおりに誰も、いなかった。

震える手でケータイを手に取る。
連絡をとろうとしたが、メールはおろか電話すら通じない。

こんなの、うそだ!
夢だ!

怖くなって家を飛び出す。
きっと、私はまだ授業を受けていて、居眠りしてて、悪夢を見ているだけなのだ。
早く、早く起こしに行かなくちゃ。
自分を悪夢から。

学校に向かう。
そこで眠っているはずの自分を起こしに。


走る、走る。
目の前に移るものを否定したくて。

走る、走る。
こんなときに限って足が思うように動かず、気持ちだけが先走る。
せめて、途中で前のように誰かと会えたらと思うのだがソレらしい気配は無い。

とうとう学校に着いた。
階段を駆け上がる。

「っ、痛ったぁ」

情けないことに足が途中でつってしまった。
これでは、上ることも降りることもできない。

そのとき、教室のドアが開く音がした。
続いて足音。

コツコツコツ・・・

こっちに来るかと身構えたが、予想に反して足音は遠ざかっていった。

「もう、もう何なのよ!? いい加減にして! だれか・・・助けて・・・」

すると、離れていったはずの足音が近づいてきた。

そして
影が私に重なった。

貴方は、誰なの?
不思議と、その人物の姿を見ようとしても顔が上がらなかった。

その人物はうつむいたままの私の様子には気にならないのかようだ。
まるでこちらを見る必要は無い、と言わんばっかりの態度だった。

「あなたは? どうしてここにいるのかしら?」

私は震えた声で
「斉藤まり・・・。 気がついたら誰もいなくて、なんとなくここへ来たの・・・」
と答えた。

すると、彼女(口ぶりからして女だろう)は
「そう」
とだけ返した。

あまりにもそっけないので癇癪を起こしそうになったが、こらえる。

「どうしたらいいのよ・・・」

「じゃあ、もう一度家に帰ってみれば? そうすれば何かあるかもよ? だって、あなたが一番初めに違和感を感じたのがソコだったんでしょ?」

私しか知らないそれを言い放ったことに
「え?」
っと疑問の声をあげようとしたが、いつの間にか自分は家の前に立っていた。

この先は・・・・
家の鍵は掛かっていなくて。
一歩中に足を踏み入れると世界がセピア色に変わった。

__まるで、過去の回想シーンみたい__

その感覚は、間違っていなかった。
ただ………
内容は、あまりにもひどかった。

何故か泣いている家族。
ソコには私はいない。

動悸がする。

見るな、視るな、みるな、ミルナ…!
やさしい幻想に浸っていたいのなら。

自分の何かが警告を発する。
逃げるな!その目で真実を見ろ!
もといた世界に戻りたいなら。

自分の何かが叱咤する。

だんだん、この矛盾した気持ちが音となって響いて。
うるさくなっていって。
不協和音を奏でて。

矛盾している。
何もかも。
そう、矛盾。

嗚呼、嗚呼、ソレが今私がここにいる原因だ……。

他人の心に裏表があるのが計り知れなくて、怖かった。
いつか、手のひらを返すように見向きされなくなるのでは。
と、起きてもいない事をただただ恐れた。

一度浮かんだ不安は、消えなかった。
恐れたが故に、ぎこちなくなってゆく関係。

ますます怖くなって。

そして、私は

消えてしまいたい、と願うようになっていた。

自傷、自殺じゃない。
そんな痛くて怖じ気づくようなことではなくて。

砂糖が紅茶に溶けて消えるように。
いなくなってしまいたかった。
けれども、そんな簡単に現実は進んでくれなかった。
進むはずが無い。

現実が嫌になって、嫌になって。
ますます思いが募るばかりで。

そして、とうとう。
現実に「思い」を打ち砕かれたのだった。
そのきっかけはくしくも私を心配してくれた友人の一言だった。

「ねえ、そんなふさぎこんでないで?そんなの、起きる訳無いじゃん。そのうちいいことあるって」

何の当たり障りの無い言葉だった。
しかしなぜかソレがひどく癇に障った。

「どうしてそう言い切れるの!?もしかしたらもあるじゃない!!それにそのうちっていつよ!?」

突然の豹変に友人が怖気ずく。
その態度をみて、ますます腹が立った。

__ほら、嫌だ。怖いって顔をしてるくせに…__

その感情に任せて。
私は大変なことをしでかしてしまった。

それは、それは。


………なんだったっけ………?


ふ、っと目を開ける。
朝の陽ざしが部屋に差し込んでいる。

「こよい〜?ご飯よ〜」
「は〜い、いま行く!」
そして決まりきった朝を過ごし、学校へと向かうためドアを開けた。


そんな彼女を見つめる、一人の女性。
彼女は一つため息をつくと、その場から立ち去って行った。

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